そんな中、長岡でガガンボの分類についての基調講演があるとの情報をキャッチしたので行ってきました。
一般向け(非フライマン向け)の講演だったのですが、個人的に興味深い話が多かったです。
ちなみにインターネットの世界では、重要な情報は多層的にやってくるのが常なので、私だけではなく他のブロガーも、フライの雑誌のガガンボ特集に先駆けてガガンボトークをネットの世界に投下するとよいと思います。
昆虫はかせネットワークは3年目で、勉強会は今回が2回目ということです。
長岡市立中央図書館
会場の講座室は満席。30人くらい集まってました。
昆虫はかせネットワークとは?
将来の昆虫はかせを増やそうと言うのが狙いとのこと。
いつまでもカブトムシクワガタじゃいけないのだとか。ふむふむ。
ガガンボとはどんな虫?〜双翅目の分類概説
ガガンボで博士号取った加藤先生はいま十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロの研究員。まさにガガンボ博士だ。
ハエ目は身近であるにもかかわらず科レベルですら同定が難しいグループなののだとか。
将来の昆虫はかせを増やそうという時に、かなり地味目なガガンボをチョイスするというのはなかなかチャレンジャーな感じします。
ハエ目(双翅目)とはざっくりいうと
15万種 4番目に多い群(一番多いのは甲虫目)。
解明度が低く課題の多いグループなのです。
Dipteraっていうのは翅が2枚と言う意味のラテン語から。
そうか、デプテラフライってのは乱暴な言い方なんだな。
高等なハエでは蛹が囲蛹というのにつつまれています。これは終齢幼虫の皮だそうだ (アブとハエを見分けるにはこれ)。
アミカの幼虫は腹側に吸盤がたくさんあって速い流れに済む。
ハエ目はハエ亜目とカ亜目に分けられ、カ亜目は原始的なグループ(そうだったのか!)。
チョウバエやヌカカ、ブユもガガンボもここに入る。
へー!
主なハエ目の特徴
ハエ目というのは進化の度合いに伴って、
- だんだん体、翅脚、触覚が短くなる傾向がある。
- 高度な飛翔能力をもつ
- 体が頑丈になる
- 交尾器保護システム
って特徴を持ちます。
ハエ亜目はかなり種数が多い
カ亜目は長角亜目、糸角亜目とも言い、
ハエ亜目は単角亜目とも言います。
高度なハエ亜目は 額嚢節(風船のように膨らむ)で囲蛹(いよう)を突き破る仕組みを持っている。
これは額のあたりがプクーと風船のように膨らんで、それで囲蛹を破るんだとか。
囲蛹ってのはハエ目の蛹を包み込む皮のこと。後述。
ガガンボについて
さていよいよ本題に入っていきます。
- 翅のない珍しいガガンボがいる。雪の上にいる。
- ガガンボ類は生育環境が多彩で食性もさまざま 海にいる種もある
- 湿ったところが好き
これが翅のないということでガガンボ、クモガタガガンボなり。
暖かいところに置くとすぐ死ぬというのでささっと回覧されるクモガタガガンボ。
結構せわしなく動く。
部屋が暗い!
狭義のガガンボ ガガンボ上科
- オビヒメガガンボ科
- ヒメガガンボ科
- シリブトガガンボ科
- ガガンボ科
ちなみにガガンボの後翅は退化して杓文字みたいな形になってますが、これは平均棍といいまして、飛翔時のバランスを取るのに使われているそうです。これがないとうまく飛べないとか。でかいガガンボの平均棍をもいで飛べなくする遊びをする子供の話があったけど、どこの子供だよ!
ヒメガガンボ科 464種
雄のガガンボの交尾器の形が特徴的で同定に使いやすい
ガガンボは人気がない
いい図鑑がなくて同定しにくい現実
地味だしちょっと気味が悪い印象も。
あとすぐ脚が取れてしまったり、標本も壊れてしまいがち
研究者から見るガガンボの魅力
ガガンボの魅力は多様性
写真撮らなかったけど翅の模様のバリエーションの例が(お、おう。たしかに柄とかバリエーションがあるが…)
採集が容易 個体数が多くて飛ぶのが遅い (マレーズトラップを使うと結構獲れるとのこと)
なにげに雄の交尾器が大きくて同定が容易なのだとか
文献収集が容易 ほぼ全てダウンロード可(無料)ガガンボのサイトがある 英語
確かこのサイトだった!
まとめ
- ハエ目(双翅目)は後翅が退化して2枚のみの羽を持つ昆虫のグループ
- 有弁翅類(いわゆるハエ)がハエ目においてもっとも派生的な特徴を持つ
- 原始的なグループでは触覚、翅、腹部、脚が長く、幼虫の頭蓋が発達する傾向
- アブとハエを見分ける上で重要なのは囲蛹の有無
- ハエの多くは額嚢(がくのう)という独特な構造を持つ
- ガガンボは多様なグループ
質問してみた
個人的にはもうちょっと生態に突っ込んだ話が聞きたかったんですよー。
質問タイムがあったので、せっかくの機会だからと1番に質問してみました。
わたし「わたしは毛針を作って渓流釣りを楽しんでいるものです。最近はガガンボが注目されていまして、春から初夏にかけてけっこう渓流魚に食われているようなのです。フライの雑誌という雑誌がありまして、次に出る号がガガンボ特集だったりします。
それで、流水性のガガンボは日本にどれくらいいるのですか?」
この場においては余計な情報を交えながら質問してみました。
加藤先生「流水性(幼虫が水中)のガガンボは20種くらいでしょうか」
わたし「本州では?」
加藤先生「本州でもそれくらいですね。ボリュームとしてはウスバガガンボが多いです」
わたし「成虫はどれくらい生きているんですか?」
加藤先生「成虫の寿命は短くて、せいぜい1週間くらいです」
わたし「(聞きたいことはまだまだあるんだけど)ありがとうございました」
ちなみに、ガガンボは700種くらいが知られているが、未記載種が多くて、そのうち全部で倍くらいになるのかもしれないとか。
その他の質問
「ガガンボの語源は?」
「ガガンバイ 大蚊というのが記録にあるがよくわかりません」
メスのガガンボについて
雄のガガンボは交尾器で同定が容易だ。交尾器だけでもそれだけで同定できると言ってもいいかもしれない。
しかしメスのガガンボで同定できるのとできないのがある
メスは記載されていないケースが多い
形態からは全く区別つかないものもある DNA鑑定しかない
このあとはキョロロの近隣で見つかった珍しいカビ(エゾゼミに寄生)の話があり
さらに
ミズアブが生ゴミ分解に役立つのではないかって話が続きました。
コンポストに湧いたりして嫌われがちなミズアブですが、ミズアブの幼虫が湧くと他のハエが発生しにくいんだとか(消化酵素と一緒に何か忌避物質がでているのか、あるいは他のハエの成長を阻害する何かが出ているのか)。
世界には生ゴミ回収の仕組みがプアなエリアが多くあり、それが引き起こす不衛生が原因の下痢などで命を落とす子供もまだまだ多くいます。
この仕組みは生ゴミが分解されるだけでなく、
タンパク質がたっぷりのミズアブの幼虫(ぷくぷくしてうまそう)が
- 飼育している鶏にとって有用な餌になって鶏が肥えて高く売れる
- ミズアブの幼虫を餌として養豚場や養魚場に売れる
などの効果が期待されています。
3センチくらい有るかな、ミズアブの幼虫。
これがミズアブが引き起こす経済的なサイクル。
思いがけず面白い話が聞けたなー。
この後も昆虫採集や標本の話があったんですが、時間がなくってここで退席。
越後長岡パーマーク
越後長岡のプロショップ「パーマーク」で不足フックを買ったついでに
スコットのGSのニューモデルのチェック。
8フィートで3番、ジャパンスペシャルだ(尺マークに注目!)。
振った感じは良好。ライン通して振ってみたいですねー(欲しくなってしまうだろう…おそろしい…)。
ガガンボフライにウイングは必要かトークに花が咲きました。
フライの雑誌のガガンボ特集が楽しみです。
雑誌って言えば、「渓流2020春」にすごくリアルなカマドウマフライが載ってた!カマドウマとハリガネムシのエピソードと共に!要チェックですね!
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